翼に関して取得した特許の概略  Outline of patents obtained for wings.

 特許第6452877号として公開されましたので概略を紹介させて頂きます。


 <出願までの経緯>

 翼にどのようにして揚力が発生するのか?についてはまだ諸説ありますが、それぞれの説に対して私なりの疑問点があり、私見がありました。

 私見を整理していく過程で、どうしても揚力と抗力(空気抵抗)を自分で測定してみたい欲望に駆られた訳です。

 そこで「揚力抗力測定装置」を自作し、種々の測定モデルでデータを得るうちに、高効率(大揚力、小抗力)の、つまり揚抗比の大きな翼の形状とはどんな形状なのかを知りたくなったのでした。

 写真は自作した「揚力抗力測定装置」


 試行錯誤の結果、ようやく翼の断面形状に対する考え方(こうすればこうなる)が整理でき、それでは、と理想を狙った断面のモデルを作成して測定した結果、狙った以上のデータを得られたので、これは!と特許出願した次第です。


<特許内容概略>

1、「流体中を移動する物体の最も抗力が小さい形状は、流線形(前端が丸く、後端が尖った魚の形)である」、とほとんどの辞書が解説しています。

 がしかし、実はそうではなかったのです。


 下図は代表的な流線形のNACA0010。

(NACA:全米航空諮問委員会1915年創立、1958年NASA:米国航空宇宙局となる)

 

・確かに水中を高速で泳ぐ魚の形が理想の形と思われたのは当然のことですが、魚にはその形に、

 ①高速で泳ぐ機能、そしてもう一つ、

 ②餌を捕食する機能、

この二つの機能を追求しながら長い年月をかけて進化してきた結果がこの形なのです。

 人はこれを「流線形」と呼び、これが抗力の最も少ない理想の形だ、と思い込んだ訳です。


 しかし、飛行機の翼には捕食の機能は不要です。(笑)


・ところで巨大なタンカーや潜水艦が大量の海水を押し退けている動画を観たことはありませんか?そしてそれらの先端が尖っていれば抵抗はもっと小さくなるだろうに、、、と思ったことはありませんか?

(画像引用:ウィキペディア )

(画像引用:ウィキペディア )


2、一方超音速で飛ぶジェット戦闘機の翼は薄く、その先端は鋭く尖っているものさえあります。超音速で飛ぶ飛行機では先端が尖った翼が抗力が小さいことは当たり前に知られていました。

 しかし、亜音速(音速以下)で飛ぶ飛行機には依然としていわゆる「流線形」を基本とした翼断面が使われています。

 下図は一般的な翼断面の例

(画像引用:ウィキペディア )


(画像引用:ウィキペディア )


3、実は亜音速で飛ぶ場合も先端が尖った翼なら大きく抗力が低減できるということ、つまり「淀み点が抗力に及ぼす影響が思いの外大きいこと」を、私は実験を通して認識したのです。

 例:下の写真の様に、全体の(容積と表面積)ほんの数パーセントの部位である先端を尖らせるだけで、抗力は8.9%もダウンしたのです。

 翼の幅全体に渡って前縁に生じる「淀み点」の存在は、予想以上に大きな圧力抵抗を生んでいるのです。


 一方、自重を押し上げる大きな推進力を備えるジェット戦闘機なら問題ないのですが、翼の先端を尖らせると、迎角が大きくなった時に翼上面で流れの剥離が生じて揚力を失いやすい、と言われていることで、翼の先端を尖らすということはタブーとしてあまり詳しく研究されて来なかったのかも知れません。

 しかし、何れにしても設計者が流線形にこだわってきたのは、辞書にある様に、流線形のイメージが強烈すぎたからなのです。


4、通常、亜音速機の翼の迎角は2.5°前後が多いとのことですが、この実験では、迎角を持った翼の断面について、先端の形と位置、そして効率的な全体の断面形状を求めてみようということです。


 この実験の過程で、翼の揚力発生のメカニズムの私見が役に立ったのは言うまでもありません。(別途掲載)


 翼の断面形状と揚力・抗力の関係は実に微妙で、ある程度その関係が解ってきた時、「抗力減を重視した形状」と「揚力増を重視した形状」の2モデルを作って計測しました。見た目はそれほど違わないのに、測定結果が狙いどうりだったのにはとても感激したものです。


 私の特許は、翼の性能を左右するファクターを整理し、その飛行機が求められる諸条件に即して、実現可能な高効率の断面形状を提供出来る、というものです。


5、旅客機などの大型機は複雑な機構を組み込んで翼の形状を変えて揚力を増大させ、低速で離着陸できる様にしています。写真に見える翼後部の6箇所の突起は翼を変形させ、保持する装置のカバーです。複雑な機構であり、全部で8個あるこの装置は間違いなく巡航時の抗力を増加させています。

 変形したこの形状が大きな揚力と抗力を生むのですが、飛び立った後は揚力を少し犠牲にして、抗力を大きく落として巡航するわけです。

(画像引用:ウィキペディア )


 私の提案は、同じ翼面積の巡航時の翼形状でも、更に抗力は低減出来るし、更に大きな揚力が得られる、つまり「固定式の抗力低減・揚力増大装置」とも言えるものです。

 離着陸時に揚力が更に必要なら、そこから翼形状を変形させれば良いのです。


 私の特許は、従来よりも揚抗比の大きな翼を提供します。つまり小さな推進力で大きな揚力を得られる。通常の飛行機はもちろん、翼長が長いグライダーや、人力飛行機などには特に効果大です。

 *人力飛行機でトライしてくださるなら、無償でアドバイスさせていただきます。

 流体中を迎角をもって進む翼なら、固定翼以外にも、水中翼や回転翼にも応用できます。


 ・ところで本特許の範囲外の話ですが、単に淀み点をなくして抗力を減少させる効果は、流体中を高速で進む物体全てに応用できます

 先述の潜水艦やタンカーだけでなく、飛行機の尾翼や機体前端部、新幹線の前端部とパンタグラフなどの屋根上の各部品等、極端に尖らせなくとも「淀み点」をなくしてやればそれなりの効果が出るのです。私の実験では回転翼の場合、騒音低減の効果もあります。

<リンク>

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飛行機はこうして飛んでいる!

The plane is flying like this! 「空力」のトップページ 翼に揚力が発生するメカニズムの説明にベルヌーイの定理は使えない。 簡単な実験で証明して揚力発生の真のメカニズムに迫る。 <車の実験屋の空力実験室> Hase Aerodynamics Labo 長谷川隆

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