ベルヌーイの定理で説明すべきでない事例ーその2 Cases that should not be explained by Bernoulli's theorem-Part 2.
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*最近のWeb上の動き
最近、翼に揚力が発生するメカニズムの説明に「空気の速い流れの気圧は、それより遅い流れの気圧より低い」と解釈した「ベルヌーイの定理」を使うのを止めて、米国アンダーソン博士とエバーハート博士の提唱する「コアンダ効果で空気が下に曲げられ、その反作用(ニュートンの第3法則)で揚力を得る」という説に移りつつあるようです。
立派な肩書きをお持ちの先生方のWebで、そのような解説が数件ありました。
しかし、今だに「ベルヌーイの定理説」を主張している方々に遠慮しているのでしょうか、「ベルヌーイの定理説」を適用するのは間違いであるとは明言せず、又コアンダ効果の名前も出さずに、「流体は面に沿って流れる性質があるから」とさらりと表現している場合が多いようです。
しかし、コアンダ効果が揚力を生むことを提唱したデイビッド・アンダーソン博士とスコット・エバーハート博士に全く触れていないのは私にはしっくりこないのです。
もっとも、立派な肩書きをお持ちの先生は、更に立派な肩書きの先生が唱えている従来の説に反するようなことはWeb上にも記載できないのでしょうね。
文学の世界の新作なら引く手 数多(あまた)なんですが、科学の世界の新作となると、その道の上位の先生のお墨付きがなければ、なかなか発表の機会がないのかもしれません。
種々の学会の論文募集要項には必ずその道の先生のお墨付きを求めていますから、先述の立派な肩書きをお持ちの先生は、実はそんなところで苦心されているのかもしれませんね。
その点、私は私見を自由に記載できる。恵まれているのかもしれません。
しかし、論文の応募には必ずその道の先生のお墨付きを要求していますが、なぜ必要なのでしょうか?審査員の責任転嫁にしか見えません。責任を持って審査できなければ審査員の資格がない事になりませんか?
いずれにせよ、両博士の提唱した「コアンダ効果と作用反作用説」を用いながら、翼の上面の気圧が下面の気圧よりもなぜ低いのかと言うメカニズムはスルーしている解説が多く、ダイレクトに空気の流れを曲げる作用反作用のメカニズムだけで揚力が得られるとしている解説は、私にはどうも片手落ちの感が拭えないのです。
アンダーソン博士とエバーハート博士は、コアンダ効果は流れを速める効果はないので、コアンダ効果で曲げられた流れが、気圧が低いところ(翼の上面)で加速されて大きなダウンウォッシュが発生し、その時の質量×下方への加速度が揚力を増大させている。単に下方に曲げるだけでは揚力不足、と説いておられる訳です。
従って単に「流体は面に沿って流れる性質があるから」では、加速していることに触れておらず、両博士が提唱するメカニズムを正確になぞっているとも言えないのですがね・・・。
*両博士は、気圧が低いところで加速されて、としていますが、私は、気圧が低いところへ向かうときに加速される、と解釈しています。
ベルヌーイの定理を使うべきでない事例、に戻ります。
2−1霧吹き
ベルヌーイの定理の説明によく持ち出されるものに霧吹きがあります。
「細い管から吹き出される速い空気の流れはベルヌーイの定理で気圧が低くなり、水を吸い上げて霧状に飛ばす」というものです。
<図3>
霧吹きの原理として、恐らく私以外の全ての方がこのように解説していると思います。私も昔はこのように習いましたし、そう信じていました。
実はこれもベルヌーイの定理が作用しているのではないのです。
くどいようですが、我々の住む現実の空気中での事象では、ほとんどの流速が音速以下なので気圧の差は音速で解消されてしまい、空気の流れが周りより気圧が低いことなどはないのです。それはもう慣性で動いているのです。
人為的に作られた空気の流れは気圧の高いところから気圧の低い雰囲気中に噴出してくるのが殆どですから、雰囲気より気圧が低くなる機会などないのです。気圧が下がるのは流れがコアンダ効果で曲げられ膨張させられる時だけなのです。
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*疎密波(気圧の高低)イコール「音」は空気中を高速で伝播する。
→ よって気圧差は音速で解消されるのです。
・揚力の話に音の話を持ち出しているのは恐らく私だけかも知れません。ベルヌーイの定理を当てはめて考える時は空気を非圧縮性と定義するので、この「音」の発想が出て来ないのです。現実には空気は非常に圧縮性が大きく、伝播する音がそこら中に行き交っているのです。
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霧吹に戻って、口で吹く側の細い管の中は雰囲気より気圧が高い。だから気圧の低い雰囲気中に吹き出てくる。気圧の高い流れが雰囲気中に出た途端に雰囲気より気圧が低くなる、などとは私には考えにくいのです。
私はこれを実験で確かめたのです。→ 従来説への疑問
雰囲気よりも気圧が下がることなどは無く、雰囲気中に出た瞬間に膨張して気圧が下がり雰囲気と同じになる、こう見る方がよほど自然ではないでしょうか。
口をすぼめて吹き出した息の流れの気圧が周りよりも低いと言うのなら、周りから押し込まれて流れはすぼまって行くはずですが、手のひらに当たる息(流れ)はかなり広がっています。これも流れの気圧が低くない証拠です。(ベルヌーイの定理で説明すべきでない事例その1に記載)
そしてここでは空気の粘性で「引きずり」が起こっているのです。(引きずりは私の造語)
「引きずり」は流れと雰囲気(流れがないところ)、つまり流れと流速の差がある境目全てで起こります。<図4>
<図4>
管の内部の圧力P1が雰囲気の気圧P2より高いから雰囲気中に吹き出してきます。
管から出たところで一気に膨張し気圧が下がって雰囲気圧P2と同じになります。 その後は慣性で流れていきますが、引きずりの発生により、P3はP2より気圧が低くなり、空気を吸い上げ、その後は水を吸い上げるのです。
つまり、霧吹きの原理は「空気の粘性による引きずりがなせる技」なのです。
「空気の流れそのものの気圧が低くて水を吸い上げているのではありません。 粘性によって空気の引きずりが発生して周りの空気を流れに巻き込み、ひいては水を引っ張り上げて起きている事象なのです。」
空気の気圧が下がるのは、同じ容積で冷やされるか、同じ温度で容積を広げられる場合しか発生しないのです。
2−2 ベルヌーイの定理の説明図について
<図6>
図6はよく目にする絵です。Bの部位では流速が増し、気圧が低いことになっています。
しかし、ここで止めるからいけないのです。 一旦細くなった管を再度太く戻した場合を考えてみると、以下に示す矛盾が生じてしまうのです。 図7。
<図7>
この場合、PA=PCとなるのでしょうか? もしそうなら流れは無くなるはずです。
流れが無くならないとして、先の理論でPB<PCとすれば、空気は気圧の低いところから気圧の高いところへ流れることになり矛盾が生じるのです。
実際の空気中にこのような管を置いて空気を流すとしたなら、PA>PB>PCとなるはずです。
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①空気は常に気圧の高い方から低い方へ流れる。
と言っておきながら、
②空気中では、気圧の高低差は音速で解消される。(私見)
とはどういうことか?
それはつまり、気圧の高低差が連続して発生すると、その気圧差に沿って空気が流れる、ということです。
*(図6)のように一部だけを切り取って考えるとわかりにくくなりますね。
・現実にこのような流れがあるとしたら、(図7)の管の左側には高圧発生装置がある訳です。回転するファンでもいいですし、高圧タンクでもいいです。
そして今、右の開放口から雰囲気(気圧P0≒1atm)へ放出されている状況なら、明らかに
PA>PB>PC>P0 ≒ 1気圧
のはずです。この順序が逆転することはあり得ないのです。
気圧の差は流速の大きさに関係してきます。流れが極端に遅ければその差は微々たるものと思われます。その時はほとんどPA≒PB≒PC≒P0に近く、空気は慣性で動いている、と言ってもいいかもしれませんがそれは粘性抵抗で流れが止まるまでの一瞬でしょう。
ガラス管の中の流れは、壁面で粘性抵抗による圧力損失が発生しますので、流れが速くなれば、速度に比例して圧力損失の差も大きくなって、「 ≒ 」から「 > 」になる訳です。
PA>PB>PC>P0の関係は、工場のエアー配管で実際に見ることができます。
朝、始業前は末端でも圧力が十分あるのに始業時に工場内の多くのアクチュエーターが動き出すと末端の圧力が下がって行きます。つまり管の中で流速が速くなると管内で粘性抵抗が発生し、圧力損失が大きくなるのです。
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このように、ベルヌーイの定理の基本としてよく(図6)のように説明されるのですが、(図7)のような絵での解説は見たことがないように思いますし、ここまで考えてみると、なんか変なことになるのです。
流れの一部を切り取ってうまく説明できたように見えますが、それは理想気体の場合だけなのかもしれません。空気は理想気体ではないこともあって、全体を見た場合には従来の説明では不都合な点が出てくるのでしょうね。
(注:文中の添字が小さくなりません、ご容赦を)
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